こんにちは
管理職専門コーチの
juncoです。

この記事では、パワハラにならない部下の叱り方について、伝える順番やよくある場面を交えながら、具体的にお伝えします。
部下を叱らなければいけない場面で、管理職の方はこのようなことに悩んでいます。
- 注意したいけど、パワハラと言われたらどうしよう
- 言い方がきつくなってしまい、あとで後悔する
- 遠慮して言わずにいたら、同じミスを部下が繰り返す
- 叱ったあと、部下がよそよそしくなった
- 自分が新人の頃の叱られ方は、今は通用しない気がする
などなど、「叱らないといけない」と「関係を壊したくない」の間で、迷ってしまう方がとても多いです。
例えば、こんな場面はありませんか?
締め切りの前日になって、部下から「すみません、資料がまだできていません」と報告がありました。
思わず「なんで今ごろ言うの!?」と強い口調で言ってしまい、部下は黙ってうつむいたまま。その日以降、部下からの報告がますます少なくなってしまった…。
上司としては、「もっと早く相談して欲しかった」という気持ちから出た一言です。
でも、部下には「怒られた」「相談すると責められる」という印象だけが残ってしまうことがあります。
反対に、「言いすぎたらパワハラになるかも」と遠慮して、何も言わずにいた結果、同じことが何度も起きてしまう…というお悩みもよく聞きます。
でも、パワハラが怖いから叱らないというのは、部下のためにもなりません。部下は何がいけなかったのかわからないまま、同じことを繰り返してしまうからです。
大切なのは、叱るか叱らないかではなく、「どう伝えるか」です。
この記事を読むと、次のことがわかります。
✔︎ 「叱る」と「パワハラ」の違い
✔︎ パワハラにならない部下の叱り方の5つのステップ
✔︎ よくある6つの場面別の叱り方
✔︎ 部下を叱るときのNGワードと言い換え例
✔︎ 叱った後のフォローの仕方
パワハラにならない叱り方とは?「叱る」と「パワハラ」の違い
まず、部下を叱ることとパワハラの違いについて整理しておきましょう。
パワハラにあたる3つの要素
職場のパワハラは、
法律(労働施策総合推進法)で、次の3つをすべて満たすものとされています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されるものであること
つまり、業務上必要な注意や指導そのものは、パワハラではありません。上司が部下のミスや問題行動を叱ることは、むしろ大切な仕事のひとつです。
パワハラになりやすい叱り方の特徴
問題になるのは、叱り方が「必要な範囲」を超えてしまったときです。
例えば、次のような叱り方は注意が必要です。
- 人格を否定する(「だからダメなんだ」「向いてないよ」)
- 大勢の前で叱る(見せしめのように注意する)
- 長時間にわたって責め続ける
- 大声や机を叩くなど、威圧的な態度をとる
- 過去のミスを何度も蒸し返す
パワハラの基本的な考え方や具体的な対策については、こちらの記事で詳しくまとめています。

「叱る」と「怒る」の違い
ここで覚えておいて欲しいのは、「叱る」は相手の行動に向けるもの、「怒る」は自分の感情を出すものということです。
✔︎ 叱る:部下の成長のために、行動の改善を促す
✔︎ 怒る:自分のイライラや不満を、相手にぶつける
叱るときは、部下の「人」ではなく「行動」に焦点を当てる。これだけでも、伝わり方は大きく変わります。
部下の叱り方の基本|パワハラにならない5つのステップ
では、実際に部下を叱るときは、どんな順番で伝えればいいのでしょうか。
私がクライアントの方にお伝えしている、5つのステップをご紹介します。
ステップ1:まず自分の気持ちを落ち着かせる
ミスを見つけた瞬間は、
どうしても「イラッ」としてしまいますよね。
そのまま声をかけると、言葉がきつくなりがちです。
一呼吸おいてから話すようにしましょう。
✔︎ 深呼吸をしてから声をかける
✔︎ 「何を伝えたいのか」を一言でまとめてから話す
✔︎ 感情が強いときは、少し時間をおいてもOK
部下にイライラしてしまうときの原因と対策は、こちらの記事も参考にしてみてください。

ステップ2:場所とタイミングを選ぶ
叱るときは、できるだけ1対1で話ができる場所を選びましょう。
みんなの前で叱られると、部下は内容よりも「恥ずかしい」「責められた」という気持ちの方が強く残ってしまいます。
また、時間がたってから「そういえば先週の…」と言われても、部下はピンときません。できるだけその日のうちに伝えるのがおすすめです。
もし、会議の場などで、周りに人がいた場合、「〇〇さん、ちょっとだけ残ってもらっていい?」などできるだけ、その場で気づいたことをいうようにしましょう。
ステップ3:事実を具体的に伝える
部下を叱るときに一番大切なのは、「何が」問題だったのかを具体的に伝えることです。
×「なんでいつもちゃんとできないの!」
○「今日の見積書、金額の桁が1つ違っていたよ」
「いつも」「ちゃんと」「なんで」といった言葉は、部下にとっては何を直せばいいのかわからないうえに、自分を否定されたように感じてしまいます。
ただ、「行動のミス」は、具体的に伝えるのが意外と難しいものです。例えば、社内で確認をとらないまま、部下が外注先に資料を送ってしまったケースです。
話を聞いてみると、「前にスピードが遅いと注意されていたので、期限に間に合わせようと思った」という理由でした。
この場合、「勝手なことをしないで」「ちゃんと相談して」と言っても、部下はいつ、何を相談すればよかったのかがわかりません。
×「なんで勝手に出したの!ちゃんと相談してよ」
○「外注先に出す前に、社内で内容の確認をとる必要があるから、期限に間に合わなそうなときは、その時点で一言教えてね」
このように、「いつ」「何を」すればよかったのかまで言葉にすると、部下は次にとるべき行動がはっきりわかります。
ステップ4:部下の話を聞く
事実を伝えたら、すぐに注意を続けるのではなく、「どうしてそうなったのか教えてくれる?」と部下の話を聞いてみましょう。
部下には部下なりの理由があることが多いです。
✔︎ やり方そのものを知らなかった
✔︎ 忙しくて確認する時間がなかった
✔︎ 聞きたかったけど、聞きにくかった
✔︎ 全く考えてもなかった
理由がわかれば、「次はどうするか」を一緒に考えることができます。これはコーチングの考え方そのものです。
ただし、「全く考えてもなかった」という場合に「次はちゃんと考えてね」と伝えるだけでは、部下は何をどう考えればいいのかわかりません。
そんなときは、
「次に同じ場面になったら、まず何を確認する?」
「どのタイミングで声をかけてくれたら助かるかな?」
と、考えるきっかけになる具体的な問いを投げかけてみましょう。
部下が答えに詰まるときは、「例えば、提出する前に一度見せてもらうのはどう?」と選択肢を出してあげるのもOKです。
ステップ5:期待を伝えて、次の行動を決める
最後に、「あなたならできると思っているから伝えたよ」と、叱った理由が期待であることを伝えましょう。
そして、「次からはどうする?」と部下自身に考えてもらい、次の行動を一緒に決めます。
叱られた部下が、「責められた」ではなく「期待されている」と感じて終われることが、パワハラにならない叱り方のゴールです。
ただ、「期待しているよ」とストレートに言葉にすると、かえってプレッシャーに感じてしまう部下もいます。
そんなときは、「これができるようになったら、次はこの仕事を任せたいと思っているんだ」と、その先の具体的なステップを見せてあげましょう。
「期待」という言葉を使わなくても、部下は自然と「自分は期待されているんだ」と感じることができます。部下のタイプに合わせて、伝え方を工夫してみてくださいね。
【ケース別】パワハラにならない部下の叱り方と例文
ここからは、管理職の方からよく相談を受ける場面ごとに、NGな叱り方とおすすめの叱り方を例文でご紹介します。
ケース1:同じミスを何度も繰り返す部下の叱り方
こんなとき、つい言ってしまいがちなのが、
×「何回言ったらわかるの?やる気あるの?」
ですが、これでは部下は「すみません」と謝ることしかできません。おすすめは、こんな伝え方です。
上司:「請求書の宛名、今月これで3回目だね。どの段階で間違えてしまうのか、一緒に確認してみようか」
部下:「…前の請求書をコピーして作っているので、宛名を変え忘れてしまうんです」
上司:「なるほど、そこだったんだね。じゃあ、ミスしない方法って何がありそう?」
部下:「送る前に、宛名だけ指差し確認するようにします」
同じミスが続くときは、部下のやる気の問題ではなく、やり方の問題であることがほとんどです。「なぜ間違えるのか」を一緒に見つけることで、部下も責められたと感じずに改善できます。
ケース2:報告・連絡・相談が遅い部下の叱り方
×「なんですぐ報告しないの!社会人として常識でしょ!」
気持ちはとてもよくわかります。ただ、「常識でしょ」という言葉は、部下にとっては人格を否定されたように聞こえてしまうことがあります。
上司:「今回のクレーム、私としては当日に知りたかったんだ。報告しにくい理由があったのかな?」
部下:「自分で解決してから報告しようと思っていました…」
上司:「自分で何とかしようとしてくれたんだね。ありがとう。ただ、クレームは解決前でもいいから、その日のうちに一言教えて欲しい。そうすれば一緒に動けるからね」
ポイントは、「いつまでに報告して欲しいのか」を具体的に伝えることです。上司が欲しいタイミングと、部下が思っているタイミングは、意外とズレているものです。
ケース3:遅刻が続いている部下の叱り方
×(みんなの前で)「また遅刻?いい加減にしてよ」
遅刻は事実としてはっきりしているので、つい強く言ってしまいやすい場面です。でも、みんなの前で注意するのは避けましょう。
上司:(1対1で)「ここ2週間で3回、始業に間に合っていないよね。何か事情があるなら教えてくれる?」
部下:「実は、家族の通院の付き添いが続いていて…」
上司:「そうだったんだね。話してくれてありがとう。勤務時間の調整ができないか、一緒に相談してみよう」
遅刻の裏に、体調やご家族の事情など、言い出しにくい理由が隠れていることもあります。頭ごなしに叱るのではなく、まずは理由を聞くことで、解決の方法が見えてくることも多いです。
ケース4:注意すると言い訳ばかりする部下の叱り方
×「言い訳はいいから!」
言い訳をされると、イラッとしてしまいますよね。でも、言い訳は「自分を守りたい」という気持ちの表れでもあります。
上司:「指示がわかりにくかったんだね。それは私も気をつけるね。その上で、次に同じ提出物を作るときは、どうしたら抜けがなくなると思う?」
まずは一度受け止めてから、話を「次どうするか」に向けるのがコツです。言い訳を否定せず、未来の話に切り替えることで、部下も素直に考えやすくなります。
ケース5:年上の部下を叱らなければいけないとき
×「ルールなので守ってください」(正論だけで押す)
年上の部下には、遠慮してしまって言えないか、反対に正論だけで押してしまうか、どちらかになりやすいです。
上司:「〇〇さんの経験から見て、前のやり方の方が早いと感じるんですね。ただ、今回のルールは、入力ミスによるトラブルを防ぐために決まったものなんです。〇〇さんのやり方の良いところを活かしながら、ルールに合わせる方法を一緒に考えてもらえませんか?」
相手の経験に敬意を払いつつ、「なぜそのルールが必要なのか」を伝えることが大切です。年上の部下を「頼りにしている」という姿勢が伝わると、協力してもらいやすくなります。
年上の部下との関わり方は、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。

ケース6:チャットやメールで部下を注意するとき
最近は、リモートワークなどでチャットやメールで注意する場面も増えています。文字だけのやり取りは、表情や声のトーンが伝わらないため、対面よりもきつく受け取られやすいので注意が必要です。
○「資料ありがとう!2ページ目の売上の数字と、5ページ目のグラフの年度を確認してもらえるかな?今日の17時までに直してもらえると助かります」
✔︎ 注意の内容は、できるだけオンライン会議や電話で、声で伝える
✔︎ 文字で伝えるときは、どこを直せばいいのかを具体的に書く
✔︎ 「ありがとう」「助かります」など、やわらかい一言を添える
✔︎ 他の人も見ているグループチャットでは注意しない
部下を叱るときのNGワードと言い換え例
悪気がなくても、次のような言葉は部下を深く傷つけてしまう可能性があります。
- 「だからダメなんだよ」(人格の否定)
- 「〇〇さんはできるのに」(他の人との比較)
- 「やる気あるの?」(決めつけ)
- 「何回言ったらわかるの?」(責めるだけで解決策がない)
- 「もういい、自分でやる」(突き放し)
- 「普通はできるよね」(自分の基準の押しつけ)
これらは、次のように言い換えることができます。
✔︎ 「だからダメなんだよ」→「この部分は、次はこうしてみよう」
✔︎ 「〇〇さんはできるのに」→「〇〇さんのやり方も参考に、一緒に考えてみようか」
✔︎ 「やる気あるの?」→「最近、何か困っていることある?」
✔︎ 「何回言ったらわかるの?」→「前回と同じところだね。どこでつまずいている?」
✔︎ 「もういい、自分でやる」→「今回は私が引き取るね。次は一緒にやってみよう」
✔︎ 「普通はできるよね」→「ここまでできるようになって欲しいんだ」
私に相談に来られる管理職の方からも、「自分が若い頃はもっと厳しく言われていた」という声をよく聞きます。
その気持ちもよくわかります。ただ、昔は通じていた言い方が、今はプレッシャーに聞こえてしまうこともあるのです。それは、あなたの人間性の問題ではなく、「伝え方のズレ」なんですね。
叱った後のフォローで部下との信頼関係が深まる
部下を叱ったら、それで終わりではありません。実は、叱った後のフォローこそが、信頼関係を深めるチャンスです。
✔︎ 翌日、いつも通りに「おはよう」と名前を呼んであいさつする
✔︎ 改善しようとしている姿が見えたら、すぐに「ありがとう」「助かったよ」と伝える
✔︎ 数日後に「その後どう?」と声をかけて、困っていないか確認する
反対に、叱った後に上司がよそよそしくなったり、不機嫌な態度が続いたりすると、部下は「まだ怒っているのかな」と萎縮してしまいます。叱るのはその場限り、後に引きずらないことが大切です。
叱れない上司も要注意|注意しないことのリスク
ここまで、パワハラにならない叱り方をお伝えしてきましたが、反対に「パワハラが怖くて叱れない」という上司も増えています。
でも、必要なときに注意しないでいると、次のようなことが起こります。
- 部下が成長する機会を失ってしまう
- 同じミスが続き、お客様や他部署に迷惑がかかる
- きちんとやっている他の部下が「不公平だ」と感じる
- 我慢が積み重なって、ある日感情的に爆発してしまう
特に最後の「我慢の末の爆発」は、パワハラにつながりやすいパターンです。小さなことでも、気になったときに早めに、短く、具体的に伝えることが、結果的にお互いを守ることになります。
部下の叱り方でよくある質問
Q. 感情的に怒ってしまったときは、どうしたらいいですか?
A. 気づいた時点で、「さっきは強い言い方をしてしまって、ごめんね」と素直に伝えましょう。その上で、本当に伝えたかったことを落ち着いて話し直します。上司が自分の非を認める姿は、部下にとって安心感につながります。
Q. 何度叱っても直らない部下には、どうしたらいいですか?
A. 叱り方を強くするのではなく、「なぜ直らないのか」の原因を一緒に探すことが大切です。やり方がわかっていない、業務量が多すぎる、そもそも問題だと思っていないなど、原因によって対応が変わります。必要に応じて、手順書を作る、チェックリストを用意するなど、仕組みで解決することも考えてみてください。
Q. 部下に「それはパワハラです」と言われたら?
A. まずは慌てずに、部下がどう受け取ったのかを聞きましょう。自分の意図と、相手の受け取り方にズレがあったのかもしれません。業務上必要な注意であっても、言い方や場所に問題がなかったかを振り返ることが大切です。不安な場合は、社内の相談窓口や人事部に相談しておくと安心です。
Q. 叱るタイミングはいつがいいですか?
A. 基本はできるだけその日のうちに、1対1でです。ただし、上司自身が強くイライラしているときや、部下が明らかに疲れているときは、少し時間をおいた方がうまく伝わることもあります。
まとめ|パワハラにならない部下の叱り方のポイント
最後に、パワハラにならない部下の叱り方のポイントをまとめます。
- 業務上必要な注意や指導は、パワハラではない
- 叱るのは「人」ではなく「行動」
- 気持ちを落ち着かせ、1対1で、その日のうちに伝える
- 事実を具体的に伝え、部下の話を聞く
- 期待を伝えて、次の行動を一緒に決める
- 叱った後のフォローで、信頼関係を深める
部下を叱ることは、決して悪いことではありません。伝え方を少し変えるだけで、叱ることは部下の成長を応援するコミュニケーションになります。
あなたの「叱り方のクセ」を診断してみませんか?
ここまで読んで、「自分はどうなんだろう?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
叱り方には、その人ならではの無意識のクセがあります。
✔︎ つい正論で押してしまう
✔︎ 言いすぎを恐れて、遠回しになってしまう
✔︎ 気になったことを、その場ですぐ言ってしまう
どれが良い・悪いではなく、まずは「今の自分を知る」ことが大切です。
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